サマリ
Google Cloud Platform(GCP)の外にあるホストからDockerのGoogle Cloud Logging driver(gcplogs
)を使用してコンテナのログをStackdriver Loggingに送信するようにした手順のメモです。 参考としてDocker Composeを使用してコンテナを起動する場合のdocker-compose.yml
の書き方も紹介します。
- IAMからサービスアカウントに”Logging”の”ログ書き込み”権限を付与する
- サービスアカウントのキーファイルをGCP外のホストに配置する
- GCP外のホストでDockerに環境変数(
GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS
)を追加する(systemd) - GCPにログを送信するオプションでDockerコンテナを起動する
- 参考:Docker Composeからコンテナを起動する
前提
コマンドやサービスの仕様は執筆時点のものです。 検証に使用したソフトウェアのバージョンは以下のとおりです。
ソフトウェア | バージョン | 備考 |
---|---|---|
Docker | 1.12.6 | - |
Docker Compose | 1.6.2 | - |
はじめに
GCPとStackdriver Loggingについて
GCPのStackdriver Loggingは、AWSでいうCloudWatch Logsに相当するサービスです。 かつてはGoogle Cloud Loggingという名前ですが、2016年9月にStackdriver Loggingに名前が変わりました。(ややこしい!) GCPの操作ログや、GCPの各サービスが出力したログ、GCE(Google Compute Engine)上のアプリケーションが出力するログの他、GCP以外のホスト、果てはAWSからもログを出力してStackdriver Loggingに集約することができます。
Dockerとロギングドライバについて
Dockerはロギングドライバという仕組みでログの出力形式や出力先を切り替えることができます。 このうちGoogle Cloud Logging driver(gcplogs
)を使用すると、コンテナが出力するログをDockerが直接Stackdriver Loggingに送信できます。
GCEインスタンスからであればGoogle Cloud Logging driverはインスタンスメタデータから送信に必要な情報を取得する仕組みなので、Dockerのログドライバにgcplogs
を指定するだけでStackdriver Loggingにログを送信することができます。
一方GCEインスタンス以外のホストからだとインスタンスメタデータは使用できません。 このためDockerにGCPの認証情報と送信先のプロジェクトIDを教えてやらないと、Stackdriver Loggingにログを送信することはできません。 このメモはその設定方法をまとめたものです。
1. IAMからサービスアカウントに”Logging”の”ログ書き込み”権限を付与する
ログ送信する使用するGCPのサービスアカウントにIAMから権限を付与します。 Google Cloud ConsoleのIAMのページでサービスアカウントに”Logging”の”ログ書き込み”権限を付与して下さい。 これでこのサービスアカウントを使用してGoogle Stackdriverにログを送信することができるようになります。
2. サービスアカウントのキーファイルをGCP外のホストに配置する
サービスアカウントのキーファイルをGCP外のホストに配置します。 もしキーを作成していない場合はGoogle Cloud Consoleのサービスアカウントのページから、キーを作成してキーファイルをダウンロードすることができます。
配置したキーファイルはDockerデーモンが使用します。 (docker
コマンドを実行してコンテナを立ち上げる一般ユーザではありません) Dockerデーモンはrootユーザで実行しますので、キーファイルに安全に所有者とパーミッションを設定するなら、所有者はroot
でパーミッションは400
にできます。
3. GCP外のホストでDockerに環境変数(GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS
)を追加する(systemd)
Dockerデーモンがキーファイルの認証情報を使用してStackderiverにログを送信できるようにする設定を行います。
大抵の環境ではsystemd経由でDockerデーモンを起動していると思います。 systemdでDockerデーモンの設定を行う方法は環境により異なります。 ご自身の環境の設定方法は以下のDockerの公式ドキュメントを参照して下さい。
私の環境では以下のファイルがsystemdのDockerの設定のファイルでした。 このファイルを編集します。
/etc/systemd/system/multi-user.target.wants/docker.service
[Service]
セクションにEnvironment=
でGOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS
環境変数を追加します。 値はキーファイルへのフルパスを指定します。
[Service]
# いろいろな設定が書いてある
# GCP Credentials
Environment="GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS=/path/to/your/credentials.json"
設定ファイルの編集が済んだらsystemdに変更後の内容を読み込ませます。
systemctl daemon-reload
systemd上で設定が反映されているかは以下のように確認できます。
systemctl show docker
確認できたらDockerデーモンを再起動して下さい。
service docker restart
4. GCPにログを送信するオプションでDockerコンテナを起動する
以上でGCP外のホストのDockerデーモンからGoogle Cloud Logging Driverを使用して、Stackdriver Loggingにログが出力できるようになりました。
実際にログをStackdriverに出力するには、コンテナの起動時にログドライバとプロジェクトIDの指定が必要です。 docker run
でコンテナを起動する場合は以下のとおりです。 <プロジェクトID>
はご自身のGCPのプロジェクトIDに、<イメージ名>
は起動するDockerイメージ名に置き換えて下さい。
docker run --log-driver=gcplogs --log-opt gcp-poject=<プロジェクトID> <イメージ名>
--log-driver=gcplogs
はログドライバにgcplogs
(Google Cloud Logging driver)を使用する設定です。
--log-opt gcp-poject=プロジェクトID
はGCPのプロジェクトIDの指定です。 GCP外のホストだと、インスタンスメタデータからプロジェクトIDが取得できないため、プロジェクトIDの指定は必須です。
Google Cloud Logging driverについては以下のDockerの公式ドキュメントを参照して下さい。
5. 参考:Docker Composeからコンテナを起動する
前節のdocker run
に相当するdocker-compose.yml
を記述します。 Composeファイルのバージョンによって指定が異なります。
v1の場合は以下のとおりlog_driver
とlog_opt
で指定します。
log_driver: gcplogs
log_opt:
gcp-project: "<プロジェクトID>"
未検証ですがv2およびv3では以下のとおりlogging
以下のdriver
, options
で指定するとのことです。
logging:
driver: gcplogs
options:
gcp-project: "<プロジェクトID>"
ロギングドライバ周りのComposeファイルの記述については以下のDockerの公式ドキュメントを参照して下さい。