ThinkPad X240 ハイパフォーマンス高解像度ディスプレイパッケージを購入し、1週間使ったので感想をまとめたい。
はじめに
まず、私はThinkPadが好きだ。 高品質なキーボードとトラックポイントの最高のコンビネーション、自力でパーツ交換が可能な高い保守性、他のメーカーを圧倒するノートPCとしての完成度、まさに質実剛健という一言に集約されたイメージ、すべてが好きだ。 これをもって私はThinkPadの保守的なユーザといえる。
私はThinkPad X200を学生時代に購入し、それを4年間使い続けてきた。 大好きなThinkPadを4年間買い換えなかったのは、その間にまったく魅力的なモデルが出なかったからだ。 その理由はXシリーズのHD(1366x768)というディスプレイの解像度にどうしても納得がいかなかった。 ディスプレイの解像度はノートPCの作業効率に直結する要素であり、こんな低解像度ではX200から買い換える魅力がない。 (余談だが、当時もうひと踏ん張りしてX200sのWXGA+(1440x900)モデルを購入しなかったことをずっと後悔していたくらいだ)
だが昨年末になって、ようやく高解像度なThinkPad Xシリーズが発売された。 それが”ThinkPad X240 ハイパフォーマンス高解像度ディスプレイパッケージ”である。 (長いので以下ではThinkPad X240 FHDと呼ぶことにする) このモデルはThinkPad Xシリーズ最高の12.5インチ フルHD(1920x1080)のディスプレイを搭載している。 高解像度なThinkPadを求めていた私にとって、これはまさに待望のモデルであった。
X200とX240の違い
X200シリーズから、X220、X230とシリーズ2世代を跨いで買い替えとなった、今回のX240 FHD。 その間にThinkPad Xシリーズは大きく変化した。 このエントリーではその変化について1つ1つ感想を述べていきたいと思う。 まずX200とX240の主な変化は以下のとおり。
- CPU、メモリ、ストレージの性能が大幅に向上した
- キーボードが7段から6段になり、アイソレーションタイプとなった
- トラックポイントのボタンがトラックパッドと一体化した
- ディスプレイが高解像度化した
- リアバッテリーの他に内蔵バッテリーを搭載可能となった
CPU、メモリ、ストレージの性能が大幅に向上した
4年間分の性能向上があり、X240 FHDの性能には大変満足している。 これについてはスペックを見れば明らかなので深くは述べない。
注意点としてX240ではメモリのスロットが1本となり、事実上8GBより多いメモリを搭載できなくなっている。 私はX200で4GB x 2枚で8GBまでメモリを増設していたため、このスペックは少々残念に感じる。 8GBは通常使用では全く問題にならないメモリ量ではあるが、OSを仮想化するなどハードな使い方をすると、足りなくなる場面もあるだろう。 正直これは内蔵でも良いので、せめて16GB程度までメモリをカスタマイズできる余地が欲しかった。
2014年現在、ストレージについてはSSD以外考えられない。 後述するがX240にはインジケータの類が一切なく、ストレージのアクセスが目で見えないのだ。 アクセスの遅いHDDではこれはかなりのストレスになると考えられる。 幸いX240はユーザによるストレージの交換が可能であるため、私はHDDモデルを購入し自分でHDDをSSDに換装した。 換装する手間をかけたくない人は、素直にSSDモデルを購入すべきだ。
キーボードが7段から6段になり、アイソレーションタイプとなった
これはX230からの変化である。伝統的な7段キーボードから、ノートPCでは一般的な6段キーボードとなった。 さらにパンタグラフタイプからアイソレーションタイプへキーボードのメカニズムも変更された。
まず6段キーボードについてだが、これは納得できる配列だと思う。(※私はUS配列のモデルである) ScrLk、Pause、Insert、Menuといった使用頻度が低いキーは削除された。 X230の時点でInsertは物理キーとして残っていたが、X240ではEndキーと一体化している。 X230はファンクションキーの間の区切りが無かったのだが、X240では4個ごとに区切りが復活した。 ESCキーはX220でファンクションキーと並ぶ縦長のキーに変化したが、これも6段キーボードへの布石だったと考えると興味深い。 ファンクションキーと並ぶ形となったESCキーとDeleteキーは幅が広くとられており、押しやすく工夫されている。 またPgUp、PgDnの両キーがカーソルキー脇に移動し、個人的には使い勝手が良くなったと感じる。
続いてパンタグラフタイプからアイソレーションタイプへのキーボードのメカニズムの変化だが、これは思ったより良く出来ている。 というのもアイソレーションタイプとしてはストロークが長くとってあり、しっかりとした打鍵感があるし、ミスタイプもしにくくなっている。 やはりパンタグラフキーボードの打鍵感を懐かしく思うところはあるが、ThinkPadの伝統的なタイプ感が損なわれるという私の懸念は杞憂だったようだ。
トラックポイントのボタンがトラックパッドと一体化した
トラックポイントユーザにとっては、一言でいうと最低な変更である。 X240では、これまで独立したボタンであったトラックポイントの左・中央・右クリックボタンが、トラックパッドと一体化してしまった。
トラックパッドのクリックは、トラックパッドのどこをタッチしているかによって判断される。 このためトラックポイントを使っていて、同時に左クリックのエリアに指を添えていると、中央クリックや右クリックが左クリックに誤認識されてしまうのだ。正直これはありえないと思った。 またトラックパッドを有効にしていると、意図せずしてトラックパッドでカーソルを移動させてしまうことがあり、やはりこれも使いにくい。 トラックポイントとトラックパッドのコンビネーションという意味では、完全に失敗作だと言える。
またX240はトラックパッドが大型化しているため、キーボードのパームレストが長く取られたデザインとなっている。 これにはキーボードを画面側に寄せる副作用があり、傾斜のないX240では画面側のキーが押しにくくなってしまっている。 キーボードの6段化によりキーボードの奥まで指を伸ばす頻度が上がったため、これはマイナスポイントだ。 バッテリーについての部分で後述するが、キーボードに傾斜をつける目的で、6セルバッテリーを選択するのもアリだろう。
ディスプレイが高解像度化した
X240 FHDの高解像度は非常に魅力的で、想像を絶する高解像度だ。 画面を広く使うことができ、大変満足している。 この点では解像度目当てでX240 FHDを購入するユーザはみんな満足できると思われる。
ただし12.5インチのフルHD解像度は、ドットピッチに換算するとなんと0.14mm、176dpiである。 これは96dpiを基準とした環境では恐らく限界に近く高精細であることには注意が必要だ。 正直なところWindowsで10.5ptのフォントを表示させると、多くの人が小さすぎて見づらいと感じるだろう。 ディスプレイの高解像度化と、ディスプレイの見やすさは、現時点では残念ながらトレードオフの関係にある。 これだけは心にとめておきたい。
あと、これは私の感想なのだが、IPS液晶のせいかスクロール時などに残像が残り、ディスプレイの応答速度が遅いように感じる。 ビジネスユースや専門的な使い方が多いと想定されるThinkPadではあまり問題にならないが、動画再生時などにはもしかしたら不満を感じるかもしれない。もっとも高解像度の魅力を考えれば些細なことではあるのだが…。
リアバッテリーの他に内蔵バッテリーを搭載可能となった
X240では従来のリアバッテリーに加えて、3セルの内蔵バッテリーをオプションで搭載可能となった。 これにより重量は増加するが、リアバッテリーの交換も可能なので、ぜひ内蔵バッテリーモデルを選択すべきだ。 バッテリー使用時には、リアバッテリーから消費をはじめ、リアバッテリーが尽きたら内蔵バッテリーに切り替える工夫も見られる。 バッテリーを2つ搭載することにより、かなり利便性が向上したと言って良いと思う。
ちなみに気になるバッテリーの持ちだが、3セルリアバッテリー + 3セル内蔵バッテリーの構成で、実動7時間が良いところだ。 公称で15時間近いバッテリー駆動時間を謳っているモデルとしては、正直なところ期待はずれだ。 本当に1日中ACアダプタなしですごしたいのなら、迷わず6セルバッテリーのリアバッテリーを選択すべきだろう。 6セルバッテリーは底面からでっぱるが、前述のキーボードの打ちやすさの面でもメリットがあるはずだ。
その他の細かいところ
以上、ThinkPad X200とThinkPad X240 FHDの主な違いについて、感想を述べた。 これからは主な違いとは言えないが、使っていて気になった細かな違いについて書いていく。
まずX240はClassic ThinkPadとしては非常に薄い。 この薄さは、ちょうど従来型のノートPCと、ウルトラブックの中間を突いた薄さといえる。 3セルリアバッテリーであれば完全に筐体に収まるので携帯する際も邪魔にならない。 この薄さはストレージやメモリをユーザー交換可能として、更にLANポートやVGAポートまで搭載すると、限界の薄さだと感じられる。
ただし薄いのだが結構な重量感があり、この点では携帯性に難ありである。 実際3セルリアバッテリー + 3セル内蔵バッテリーの構成での重量は1.4kgほどである。 最近は1kgを切るウルトラブックが主流なのだから、もう一歩、軽量化を図って欲しかった。
あとX240はインジケータが一切存在しない。 ストレージへのアクセスや、無線LANの通信状況や、バッテリー残量を外から知る術は無いのである。 これはデザイン優先なのかも知れないが、実用性の面では十分に検討されたものなのか疑問符がつく。
他に細かい不満点としてはUSBポートが左右に1つずつしか存在しないことがあげられる。 モバイルHDDや光学ドライブといったUSB機器の中には、給電用にUSBポートを2ポート必要とする製品があるが、そのような製品はX240では利用できない。
何だか最後に不満点ばかり書いてしまったが、総合して、X240は一体型トラックパッドを除けば全体的に良い製品だ。 高解像度に惹かれる人にはおすすめできる製品と言えるし、実際に1週間X240 FHDを使ってみて私は概ねこのマシンに満足している。